公益財団法人 内視鏡医学研究振興財団

埼玉医科大学医学部 客員教授
一瀬 雅夫先生

思いかけず、このような顕彰を頂き大変光栄に存じて居ります。
公的胃癌検診への内視鏡導入は﨑田隆夫先生以来の私共の研究室の悲願であった訳ですが、内視鏡検診の仕事に取り組む様になったのは、2000年の和歌山転任がきっかけです。県の健康対策課から受診率の低迷する胃癌検診に内視鏡導入を検討する様に依頼され、本腰を入れざるを得なくなりました。県の協力事業としての地域コホートあるいは企業の職域コホートを使った試験研究のデータを基に和歌山市の内視鏡検診導入を行った訳ですが、その後、対策型胃内視鏡検診の全国展開を視野に、内視鏡検診標準化・適切な導入のために行政の依頼を受けた学会検診マニュアル作成に参画致しました。対策型胃内視鏡検診公認後は東京都や区の内視鏡検診の導入事業に参画させて頂いて居ります。振り返れば、医局員諸君や検診従事者の方々が多くの汗を流し、行政の方々から沢山のサポートがありました。今回、顕彰の栄誉を受けるのは、こうした皆さんの御蔭だと心より感謝しております。内視鏡検診は、未だ被検者に負担の多い健診方式と感じています。本財団をはじめ、内視鏡医学に参画する方々のご尽力により、この点が改善され、内視鏡検診が更に充実する事を祈念して居ります。

東京慈恵会医科大学 名誉教授
田尻 久雄先生

この度は、名誉ある賞をいただき、身に余る光栄です。五十嵐良典理事長、財団役員ならびに関係者の方々に厚く御礼申し上げます。
この授賞は、これまでご指導いただきました諸先輩先生、ならびに長年にわたり、一緒に苦労してきた国立がん研究センターや東京慈恵会医科大学の先生方、技術者の方々のご支援とご協力の賜物であり、心より感謝申し上げます。
私の主な研究の一つとして、自家蛍光内視鏡診断（AFI）やNBIなどの画像強調内視鏡の開発と臨床応用に向けた機器の改良・工夫が挙げられます。さらに画像強調内視鏡を含む日本の内視鏡診断学ならびに日本で開発された消化器内視鏡の優れた業績をアジア諸国・欧米各国など国際的に広く普及する活動を長年にわたり、行ってまいりました。これらの国際的な活動は、日本消化器内視鏡学会、アジア太平洋消化器内視鏡学会、世界内視鏡学会という組織の一員として行ってきたものであります。私が未熟な若い時代からこの世界に導いていただきました恩師、故 丹羽寛文名誉理事長にこの授賞をご報告申し上げたいと思います。そしてご支援・ご協力いただきました関係者の方々に厚く御礼申し上げます。

東海大学 名誉教授
寺地 敏郎先生

本日はこのような名誉ある顕彰をいただき本当に有難うございます。関係者の方々に心からお礼を申し上げます。
私も30年位前にこの場で研究助成を受け、それから長い道のりでした。
振り返れば1990年に私がアメリカから戻った時、現・財団理事の松田公志先生が京都大学で精索静脈瘤の腹腔鏡手術を始められた頃でその技術を教えて頂きました。松田先生が関西医大に移られてから始まった腎摘除術、副腎摘除術も最初の症例は常に2人一緒に行ってきました。
その後、当時の厚生省癌研究助成金の体腔鏡手術研究班が発足し、本日顕彰を受けられる渡邊先生や故・大上先生とも一緒に議論させて頂きました。その時泌尿器からは私1人でしたので、東大外科の出月先生がいつも気を遣って下さったのを覚えています。そうした先生方の大きな助けがあって今こうしてここに立つ事が出来ていると思っています。
その後、腎盂形成術、腎部分切除術など様々な術式が開発され、99年には京都大学で初めて前立腺全摘除術を行いました。最初は12時間半もかかってしまいましたが半年後には3時間程度で出来るようになり、学会でライブ手術を行うことができました。そのことで日本泌尿器内視鏡（ロボティックス）学会の第1回総会賞も頂戴し大変な名誉な事でした。そして2006年には我が国にもダビンチが入ってきて、前立腺全摘除術が2012年には保険収載され、今では多くの術式が保険に認められ益々発展しています。
その後、2015年からインドネシアで泌尿器腹腔鏡手術の技術認定制度を設立するためJICAの援助で2年間、さらに経産省のサポートで3年間インドネシアに通う機会を得ました。コロナによって最後まで見届けられませんでしたが、技術認定制度がちゃんと発足したと報告を受けております。その間、内視鏡財団からもインドネシアの医師を日本に招くサポートを頂いています。公の仕事としてはインドネシアへのサポートが最後の仕事でしたが、皆様からの協力のおかげもあって結果も出て大変嬉しく思っています。
今日ここに若い先生方が沢山いらっしゃいますが、今後も新しい技術がどんどん出て来るでしょう。皆さんのご活躍に期待したいと思います。
ここまで内視鏡財団並びに協力企業の方々には大きなサポートを頂きました。この顕彰と併せてここにお礼を申し上げます。

北里大学 北里研究所病院 病院長
渡邊 昌彦先生

この度はこのような立派な顕彰を頂きまして本当に嬉しいです。有難うございます。
関係者の方々に心からお礼申し上げます。
私は卒後43年、うち30年を内視鏡手術に没頭してきましたが、内視鏡関係で賞を頂くのは初めてです。だからとても嬉しいです。
92年、故・大上先生から誘われてこの道に入りました。最初の10年は毎日が楽しくて、大腸がんは内視鏡手術の良い適応であるという事にたどり着きました。また世界中の素敵な友人に巡り合えたのもこの手術を始めたおかげです。
次の10年は進行結腸がんへの内視鏡手術の取組みに邁進し、やはり楽しい毎日でした。これも自由にやらせてくれた恩師北島政樹先生のおかげだと感謝しております。
結果的に進行結腸がんも内視鏡手術の適応であるというところまできました。
あとの10年は直腸がんの内視鏡手術に取組みました。そして98年に出会った手術ロボットが普及して今やロボット支援下手術の時代になりました。
さて次の10年はどうなるでしょう。研究助成を受けられる先生方のテーマを聞き、「いろんな事が出来るんだ」と感心すると共に、是非それを実現してもらい未来を明るくして欲しいと思いました。これからはロボット支援下手術やAIが日常になることでしょう。また面白い10年が始まったのだと思います。その内視鏡手術の節目にこの賞をいただいて本当に心から感謝しております。
今後も内視鏡手術の安全な普及と開発を微力ながら続けたいと思っております。
本日は有難うございました。